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映画 ロープ/戦場の生命線(A PERFECT DAY)2015

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争(1992-1995年)が停戦した直後のバルカン半島で活動する国際援助活動家に焦点を当てたヒューマンドラマ。ジャンルとしては戦争・紛争ものになるけれど、争いが生む悲惨さを感傷的に表現するのではなく、軍人ではない登場人物の信念に基づく行動を描いたところが興味深い。

日本人には理解が難しい多民族が混在して作られた歴史、多文化共生が崩壊して起きる紛争、人権侵害、国連の役割などを知るきっかけにもなるが、純粋にエンターテインメント作品としても楽しめる秀逸な脚本だ。

停戦直後のバルカン半島、ある村の井戸に死体が投げ込まれる。生活用水の汚染を防ぐためには死体の引き上げが急務であり、そこに国境なき水と衛生管理団が出動する。深く掘られた井戸の底から死体を引き上げようと奮闘するが、ロープが切れて作戦は失敗してしまう。物資が不足している状況下で果たしてロープは手に入るのか….。

世界各地で起こっている内戦や紛争、自然災害によって人道危機が起きた際に速やかに救助活動をする国際援助活動家(NGO 非政府組織)の存在は極めて重要。活動資金は民間からの寄付で成立(資金を独立化)しているので、権力や政治圧力を受けずに活動できるという強味があるからだ。

第二次世界大戦後、国際連合憲章(第2条4項)によって武力による威嚇又は武力の行使は慎まなければならないとされているが、個別的・集団的自衛権の行使、国連による軍事的措置は認められている。時代に合わせて戦争のルール化も進んでいるけれど、軍事衝突が撤廃されている訳ではない。

例え停戦状態だとしても戦争・紛争がもたらす不条理で残酷な環境下では、日本社会における一般的な安全対策や常識・理屈は全く通じない。ほんの少しの判断ミスが死に直結する救援活動によって、村人の社会に秩序をもたらそうとする様をユーモラスにロック調の音楽を取入れて描く手法に斬新な印象を受ける。

本作は2015年(日本公開は2018年)に公開したスペイン映画で、監督はフェルナンド・レオン・デ・アラノア。実際に国境なき医師団に所属している作家パウラ・ファリスの原作(フィクション)を映画化したようだ。邦題は作品イメージを伝えてくれているけれど、個人的には原題の「A PERFECT DAY」が好き。

国連を巻き込む嘘、ロープを入手する手段、少年家族のエピソード、見えない地雷との攻防、男女間の痴情のもつれなど、楽しみどころは満載。ユーモラスに描くのは難しい題材をこれほどまでに魅力的に見せる手腕には感心してしまう。

ベニチオ・デル・トロとティム・ロビンスが共演しているだけでも大満足なのだが、メラニー・ティエリーのリアルな演技が加わることで深く記憶に刻まれる。廃墟を探索するシーンは役者の演技だけでなく、音楽が挿入されるタイミングと演出が完璧としか言いようがない。一押しの必見シーンだと思う。

アラノア監督作品は初見だけれど映像の見せ方も、音楽の使い方も魅力がある。そして106分で展開される物語の着地点も大満足で、余韻を残す見事なエンディングになっている。正義の押し付けも、お涙頂戴も一切なく、只々美しいのだ。音楽と映像が静かに流れる力強さと美しさ。

まさに「A PERFECT DAY」だ。

突然訪れるそのエンディングに答えは存在しない。本作のそういうところがたまらまく好き。

ロープ/戦場の生命線 公式サイト

『映画 ロープ/戦場の生命線(A PERFECT DAY)2015』2019.01.04

 

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